「転職を経験したことがない」のはリスクが高い

転職について面白い記事を見つけた。

 

私が以前勤めていたSIerは東大生が入りたい企業上位に選ばれるような会社で、それはもうキラキラとした優秀な新卒社員がわんさか入社してきていた。

 

地頭が良く、覚えが早く、仕事は真面目で、長時間労働を苦にしない。

 

そんな若い社員が次から次へと入社してきて、毎年4月になると「大企業ブランドはすごいなあ」と感心したものだった。

 

そんな優秀な新卒の社員の99%は凡庸で退屈な大企業の歯車に成り下がる。

 

「成り下がる」と表現したのは、彼ら彼女らのポテンシャルを持ってすれば、適切な仕事の場とチャンスさえ与えられたならば、非凡な成果を上げる者が一定数生まれるであろうことは予想できるからだ。

 

しかし優秀な新卒会社員はその持ち前の優秀さで、真面目に会社のルールを学ぶ。

その持ち前の素直さで、古臭くて非合理な会社のルールを守り、ルールの通りに仕事をこなしていく。

 

おそろしく非効率で、あくびが出るほど退屈な標準化された業務を淡々と、深夜までこなしていく。

 

 

「転職を経験しないこと」がなぜ危険なのか。

 

一つの会社にずっと居座っていると、自社の常識が世の中の全てだと勘違いしてしまうからだ。

 

会社が変わるとコミュニケーションスタイルからツール、働き方から優秀な人間の定義まで全てが異なってくる。

 

1社目が中途入社の人が定期的に入ってきて、新陳代謝が活発な企業であれば、「外の常識」を多少は知る機会がある。

 

外資系企業であったり、ウェブ系であったり、ベンチャーはそうだ。

 

しかし日系大企業は新卒至上主義で、年次主義である。

 

流れない川が濁るように、日系大企業は自分たちの常識で凝り固まって、濁りきっている。

 

古臭い社内システム、検索できず共有されない社内のノウハウ、無駄な会議、無駄な申請、時代遅れの開発スタイル。

 

自分たちの日常の全てが「世の中の常識」からはるかに遅れているのに、転職したことがないから気付かない。

 

同じ会社でずっと働いている人が意思決定を担う「偉い人」になっているので、自社に対しての危機感に真剣味がない。

 

スマホの時代に黒電話を使っていて、その不便さに気付かないようなものだ。

1990年代から全く進歩していない。

 

日系大手IT企業とウェブ系企業のツールの違い

ここではわかりやすく、普段の業務で使うツールの違いを見てみよう。

以前勤めていた大手SIerでは、社内の標準的な連絡手段は「メール」であった。

 

2019年頃からオンプレ環境に立てたオープンソースのチャットツールを導入し、全社的にチャットが使えるようになった。

 

チャットが使えるようになったのが令和からなのである。

 

情報共有の手段は「ファイルサーバに置かれたExcel」だった。

 

Excelはいちいち検索できないので、自分でファイルサーバを漁り、時には人に聞き、必要な情報をExcelを開きながら探していた。

 

2000年頃からずっと使われ続けている謎の「企業間・部門間情報共有プラットフォーム」も健在だった。

 

ソースコードは自社製の謎の「ライブラリー管理・リリース管理システム」を使って管理していた。

 

自動テストツールも自社製の非常に使いづらい、意味不明なものであった。

 

社内ポータルも自社製、会計システムも自社製、全てが使いづらく、そして古かった。

 

ソースコードをリリースするために謎の「リリース申請書」を出し、承認を待った。

テストは全てExcelの項目を手動でこなして終わらせた。

 

 

転職したらどうなったか。

 

ウェブ系企業ではTeamsであったり、Slackでコミュニケーションを取る。

 

情報共有はConfluence上で行う。

 

Google DriveやOne Driveでファイルを管理しているため、いちいちファイルサーバー上でExcelを開かなくてもURLをクリックすればファイルを開けるし、共同編集ができる。

 

そういえばSIer(日系大手企業)から転職してから私は一度も「ファイルサーバーを漁って情報を探す」という無駄な作業をしたことがない。

 

会議は30分がデフォルトで、いちいち長時間の会議を入れて他人の時間を無駄にしない。

 

ソースコードはGitHubでバージョン管理し、Pull Requestを出してマージする。

GitHub ActionsでCI / CDを回していく。

 

テストにはテスト専門のチームがいて、品質を確保するためのエンジニアとしての職務がある。

 

それぞれの業務に積極的に新しいなやり方を取り入れ、改善を続けていく。

 

そんなウェブの文化を、SIerにいた頃は知らなかった。

 

本で読むだけでは外の世界は見えてこない。実際に体験しないと、外の世界と自分たちの世界がどれだけ違うのかがわからない。

 

「転職したことがない」

 

「同じ会社で20年も30年も働き続ける」

 

というのは、リスクが高い。

 

会社の常識が自分の常識となり、それが世間の常識と思い込んでしまう。

 

社内の政治には詳しいが、外で自分の実力が通用するのかもわからない。

 

市場に一度もさらされたことがない人材は視野が狭く、応用が効かない。

 

また転職直後の「成長のボーナスタイム」も経験できないだろう。

 

新しい会社に入ったばかりのキャッチアップ期間は新たな経験を吸収しまくる大チャンスでもあるのだ。

 

そういう成長タイムを経験できず、なあなあと今までの会社のやり方だけをダラダラ続けていると、当たり前に能力は高まることはなく、経験の幅も広がらない。

 

だから、転職を経験しないとどうしてもしょぼい人材になってしまうのだ。